地域の方々へのインタビューにより利用者目線を徹底
MCUDが考える新しいNSCのキーワードは「過ごす」
これからの時代に必要とされるNSC(Neighborhood Shopping Center:近隣型ショッピングセンター)構築というミッションの実現に向けて始動したプロジェクト。数々の商業施設開発に携わってきたベテラン、新しいNSCの開発に意欲を燃やす若手、高い専門性を持つ技術者など、多様なメンバーが集められた。真っ先に取り組んだのは、地域の方々へのインタビュー。施設に求められる機能やサービスについて聞き込みを行い、利用者目線を持つことに徹した。フィールドワークで得た情報を元に、気軽で便利なネットショップやコンビニではなく、既存NSCの二番煎じでもない価値について、議論は繰り返された。
そこから辿り着いたキーワードは「過ごす」。従来の買い物機能に加え、「滞在性」や「コミュニティ性」を兼ね備えることができれば、地域に暮らす人々の生活に欠かせない存在になれる。これからの時代に必要とされるNSCのコンセプトが明確に共有されていった。


新発想のNSCの実現には、ハードとソフトの両面から
コンセプトに賛同したパートナー企業が集う

テラス席、カウンター席、キッズスペースなど幅広いシーンで利用できるよう工夫を凝らした。
メンバー達は各分野でその専門性を発揮し動き回った。コンセプト実現のために既成概念を壊す仕掛けを盛り込んだ。
地域の方々がゆっくり過ごせる飲食店がないことに着目し、この規模の商業施設では珍しいフードコートの導入を決断。滞在性を高める為、居心地や使い勝手の良さにこだわった。リーシングではフードコート初出店となる築地市場に買参権を持つ鮮魚店をはじめ、地元の人気ラーメン店など、個性的なテナントを誘致。幅広い客層に昼夜を問わず様々なシーンで利用いただけるよう、メニュー構成にも工夫を凝らした。また、多様なシーンに対応できる座席構成、居心地のよい内装や家具の選定で滞在時間を伸ばす空間を作り上げていった。
コミュニケーションスペース「マチノマノマ」は、コミュニティの創出というコンセプトを具現化した象徴的な区画だ。通常のイベントスペースとは異なり、テナントや地域住民の交流の場と位置付けた。ワークショップやイベント、記念日のパーティーなど、自由に活用できるよう、オープンキッチンとラウンジを設置。スペース活性化の実績を数多く持つ株式会社リビタの協力を得て、活動をサポートするスタッフが常駐する運営スタイルとした。 開発計画が進む過程では、当初の4階建構想を5階建に増床する決断があった。フィットネス・クリニック・保育園などの生活サポート機能に対するニーズの高まりを背景に、関連するサービス店舗の更なる集積が必要と考えたからだ。また、利用者が憩える共用部やテナント従業員のES向上に貢献するバックヤードの拡大もコンセプト実現には不可欠と、プロジェクトマネージャーが信念を貫き社内を説得した。
限られた時間と予算の中で「コスト配分を徹底的に見直しメリハリを見極めた。テナントが懸念する人材確保につなげる事はもちろん、働くスタッフの大半が近隣住民であり、お客様にもなり得ることを重視し、従業員休憩室の環境整備にコストをかけた」と建築担当は言う。こうした取り組みによってハードとソフトが呼応するNSCを一歩ずつ現実のものにし、テナントや協力会社の賛同を得ることができた。

顧客ニーズを強く意識し、必要と決断すれば臆することなく実現に向けて動いた。

用事がなくてもつい顔を出したくなる、街の「行きつけ」を目指す。
MCUDが目指すのは商業施設の可能性を拡げること
街における人々の暮らしの中心となる商業施設「マチノマ大森」が誕生し、時代や地域のニーズと共に進化していく新ブランド「マチノマ」シリーズ展開の足がかりとなった。これからの時代に必要とされるNSCを構築するというミッションに挑んだメンバー達は、「今回のプロジェクトで得た経験・スキルを生かし、商業プラスアルファの施設など、複合的な開発にもチャレンジしたい」と、次の目標へ目を向けていた。
柔軟な発想や積極的なチャレンジを評価する会社風土も、メンバーのモチベーションになっている。


各メンバーに求められる役割は異なるが、目指す方向は同じだ。